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「ラブライブ!」演出的みどころチェック(1~3話) [アニメ]

 1話~3話でシリーズの導入が一区切りつきました。そこで、1話~3話の演出的なみどころやポイント(あくまで個人的な考えであり推察ですが)を改めてチェックしてみたいと思います。ちょっと長くなりますが、まず、全体的な部分から。

1話 orz →2話 (*゚∀゚*) → 3話 (゚Д゚)!!
 1話~3話はまさに「序破急」の構造。そして起承転結の「起」。物語の導入でありプロローグ(文字通り「ラブライブ!」のプロローグ)が描かれ、3話の挿入歌の通りここからがスタートだ!という感じに仕上がっています。ニコ生で新田恵海さんが紹介した「1話 orz →2話 (*゚∀゚*) → 3話 (゚Д゚)!!」も、まさに的を射ていた感じですね。

9人全員の描写
 穂乃果、ことり、海未の3人を中心にストーリーは展開していますが、何気に第1話から主要キャラクター9人全員が登場し、続く2話、3話でも全員登場しています。
 しかも、単に顔見せしているだけではなく、また、無理矢理に登場させた風でも無く、物語の展開上必然的な形でそれぞれにきちんと意味や役割が与えられています。それぞれのキャラクターがどのように登場し、どのように行動し変化しているかを追ってみるのも面白いかと。

テンポの良さ
 「ラブライブ!」は描く必要の無いシーンや描写、台詞などをバッサリとカットすることでテンポの良さを生み出しています。

音響効果と劇伴の良さ
 TVアニメ「ラブライブ!」は、映像もさることながら音響面にも要注目です。環境による音質の変化や、周囲の環境音といった音響効果も聴き所。また、監督自身も劇伴の重要性を語りランティスの木皿氏音響監督の長崎氏も自信を覗かせていただけのことはあり、劇伴(いわゆるBGM)が非常に素晴らしい。曲自体の良さだけでなく計算し尽くされた映像とのタイミングも見事で、物語と映像と音楽が一体となって演出効果を発揮しています。1話の校舎裏でダンスの練習をする穂乃果のシーンや、2話の落ち込んだ穂乃果のシーン、3話の神田明神でのお参りのシーンやライブ前のシーンなどはホントに絶妙で感動的です。


 続いて、各話の演出的見所。

#1「叶え、私たちの夢――」
歌から始まる冒頭
 1話は穂乃果の独唱から始まります。歌(歌詞)を強く印象づけるためと、明るく元気な出だしから廃校のお知らせでショックを受けるまでを短いアバンタイトルで急転直下に描いて勢いを持たせ視聴者の意識をつかむ役割を果たしています。もし歌のシーンを削って廃校のお知らせを知る場面から始まっていたらどうでしょう。掴みのインパクトが少し弱く感じるのでは?

ヒデコ・フミコ・ミカ
 Aパート開始早々に登場した穂乃果のクラスメイト。さりげなくわざわざ名前を呼び、3人のアップとセリフも用意され仲の良いことを伺わせています。ただのモブキャラクターではありませんよというメッセージともとれる。そしてこの3人のクラスメイトは、2話、3話でも重要な役割を果たします。あ、ちなみにこの3人、ヒ・フ・ミ(一二三)なんですね。

ことさらに強調される「廃校」
 掲示板に無駄に沢山貼り出された「廃校のお知らせ」。わざわざ「廃校」の文字だけ大きく書かれ、しかも穂乃果に気付かせるために1枚だけ無駄に大きい。ギャグ的要素はもちろんですが、「廃校」というフレーズを強烈に印象づけるとともに、わかりやすさを演出しています。非現実的な描写ですがそこに深い意味はない…と思う。

ランチパックにかぶりつく穂乃果
 ご機嫌モードの穂乃果といえばランチパックにかぶりつく、みたいな。

Bパート冒頭のやりとり
 理事長室でのやりとりと教室でのやりとりが交互に描かれ、かつ、会話のやりとりが成立しているかの様につながっています。絵里と穂乃果、それぞれに同じ志を持ちなんとかしたいと考えていることが判ると同時に、無力感を痛感する絵里と、実際に行動を起こそうと動き出す穂乃果との対比にもなっており、以降2話、3話と繰り返される絵里の忠告とそれに対峙する穂乃果という構図にも繋がっています。

幼少時代の思い出
 木登りしてエライ目に遭った思い出。でも夕日が綺麗だったなぁ、という。“ただそれだけ”ですが、だからこその純粋な感動であり思い出なのです。劇伴の絶妙な効果もあって深く考えさせずいい話だなぁと思わせられます。

ふわっとなびくことりの髪
 「ねえ、海未ちゃん、私やってみようかな」とことりが語る場面。瞳の僅かな動きで魅せる表情の変化が絶妙ですが、一方で「海未ちゃんはどうする?」の次の微笑むカット、ここだけ見るとちょっと髪の動きが大げさです。しかし、このシーンの一連の繋がりの中では特に違和感も感じず、むしろハッとさせられるショットになっていたと感たのではないでしょうか。もしこのカットが微笑むだけだったら?…動きとしてはリアルでも、印象の弱いシーンになったかもしれません。

エンディングのミュージカル風演出
 感情が高まると歌になる、というのがミュージカルの鉄則。周りの問いに対する答えを歌で返すという構成にし、力一杯歌って踊った後で「やるったらやる!」と宣言することで、穂乃果の強い思いや熱意をより引き立てています。もし、この場面が普通に台詞だけで語られたとして、果たしてこれだけの勢いと熱量があったでしょうか?
 また、1話で歌って踊るシーンを見せ、ラブライブ!は歌って踊るアニメなんだ、という方向性を視聴者に示したかったはず。とはいえ、ストーリー展開上では歌って踊れる段階では無いためそういったシーンを入れることができない。そこで出てきたのがミュージカルの手法だったのではないでしょうか。インパクトもあったし、うまいこと考えたなぁと思います。

#2「アイドルを始めよう!」
前回のラブライブ!
 力強く軽快な劇伴にのせて紹介される前回のあらすじ。「始まった!」という高揚感を与え、視聴者の“スイッチ”を切り替えてくれます。

車のナンバー
 1話の挿入歌シーンでは車のナンバーが「LOVe LIVe」となっていました。一方、2話冒頭では「LL55 46-49」と一応番号にはなっています。つまり、1話の挿入歌シーンはイメージシーン的なものである、ということかと。

朝から何?
 1話の部活申請のときと同じような構図が展開されます。性懲りも無く今度は何なの?というワケです。
 また、このアバンタイトルの場面では実際に使用許可が承認されるまでの課程は丸ごと省かれています(希が「生徒会がとやかく言う権利は無い」と諭した後、生徒会室を出てきて「やったー」と喜ぶ穂乃果を描くことで許可が下りたことを示している)。このアバンで重要なのは「新入生歓迎会の放課後に講堂でライブをやる」という事と「カードが後押ししろと告げる」という事であり、必要ない描写を省いてテンポを良くしています。

うえぇぇぇ
 音楽室のドアにかじりついて拍手している穂乃果に驚く真姫。1話と同じシチュエーションが繰り返されていて、いわゆる“天丼”というヤツですが、穂乃果がそれだけ純粋に真姫の演奏と歌に感動しているということも表しています。

謎のランキングシステム
 このランキングがどういうものでどういうシステムなのか…というのは、おそらく劇中で事細かに説明されることは無いと思います。そこは割とどうでも良く、そして「ラブライブ!」は割とどうでも良いことはバッサリ省略します。
 絵里がなにげに気にかけている、真姫ちゃんがこっそり一票入れてくれた、誰かの応援がある、ということをわかりやすく視覚化するためのギミックという認識でいいのではないでしょうか。

陽の当たる場所に出る真姫
 放課後の音楽室に独り。夕暮れの帰り道に独り。そういったふうにしか描かれてこなかった真姫(穂乃果に屋上に連れ出されたりはしていますが)。2話のラストでは満足げな表情を浮かべて青空の下に佇んでいる印象的なシーンが描かれ、以降(楽曲を提供し票を投じたことを境に)、真姫ちゃんは日中の場面でも描かれるようになります。

階段トレーニングによる時間経過の描写
 エンディングでは階段トレーニングを軽快にこなしていることから、それなりに時間が経過していて、かつ、日々のたゆまぬ努力があったことが窺えます。また、この練習の成果が出ているという描写と勢いは3話冒頭に繋がります。

#3「ファーストライブ」
笑みを浮かべる真姫
 意外と見落としがちかもしれませんが、チラシを手に取って嬉しそうな花陽の後ろで、通りかかった真姫がチラシを一瞥して満足げに笑みを浮かべる様子が描かれています。これはチラシに書かれた「μ’s」の文字を見ての反応ではないかと思うのですが、どうでしょう。掲示された張り紙とチラシには、初ライブのお知らせという文字の前に「μ’s」と書き足されています。

うまくいっているかのように見える宣伝活動
 2話の段階から校内で噂になっている、応援の声があるように描かれてはいるものの、よくよく見てみるとそんなに興味を持ってチラシを受け取ってもらえていないようにも見えます。海未ちゃんのあがり症克服という要素をコミカルに描かれているためそちらに意識が向く。
 開演直前も同様で、吹っ切れて張り切ってチラシ配りができている海未ちゃんの様子などポジティブな方向で描かれていますが、周囲の関心はむしろ部活の勧誘などに向いていることをにおわせています。

手をつなぐ3人と星のきらめき
 夜の神田明神。3人並んで手をつなぐその先には、きらめく満天の星空が描かれます。キラキラとした美しい星空は輝かしい未来をイメージさせます。
 また、同じ構図が後半にも出てきます。ステージで3人並んで手をつなぐ場面ですね。その先には緞帳がありますが、同じ構図だった星空の光景が想起されると共に、実際にそのさらに向こう側にあるのは暗い無人の客席という対照的な構図にもなっています。

3人並んで立つ
 3話は要所要所で3人並んで立つというシチュエーションが登場します。そのどれもが楽しげであるだけに…。

無人の客席
 穂乃果のぱあっと目を開けた笑顔の勢いからそのままワンカットでぐるっと回り込んで客席を映し出すカメラワーク。緞帳の開く音さえ消え失せる静寂。薄暗い客席に目が慣れて無人の様子があらわになり、カメラが引き、広角の画角で切り取られるだだっ広い空間。そこにぽつんと佇む3人。引きの絵と背後からのアングルが中心で3人の表情のアップはなかなか映らない。これまでのテンポの良さとは対照的に、じっくりと時間をかけて描写されることで、3人の孤独感と表情が見て取れないことによる辛さがいっそう引き立つ演出に恐れ入ります。凡庸な演出家だと穂乃果の表情が一変する様子を描いてから、カットを切り替えで無人の客席を写すとかやらかしかねないところ。
 また、このシーンに至るまで講堂の広さはおそらく意図的に描写されていません。クラスメイト3人が準備をする場面でもステージの一部や客席の一部しか映されていないし、カメラも標準~望遠の画角で空間的な奥行きが圧縮されています。こうすることで、緞帳が開いたときの講堂とステージのだだっ広さ、ぽつんと佇む空虚さがいっそう際立っています。

揺れる心
 「そりゃそうだ、世の中そんなに甘くない」のカット、よくよく見るとほんの僅かにカメラが揺れています。強がる言葉とは裏腹な穂乃果の心情を表しているかのようです…。
 また、この一連のシーンでの微妙な唇の動きや表情の変化、泣き笑いの表情はほんとうに見事。

きっと青春が聞こえる
 本編のラストシーンに重ねてエンディングテーマが流れます。このエンディングへの入り方が、そしてこの曲の魅力が「ラブライブ!」の視聴後の後味を格段に良いものにし、次回への期待感を高める効果をもたらしています。



 さて、今後の注目ポイントとしてはやはり、ここから残る6人がどうやって仲間になっていくのか。特に、絵里がいったいいつ、どのようにという点。そしてなにか思うところがあるっぽいにこの背景には何があるのか。といったところでしょうか。




 「ラブライブ!」第1話感想第2話感想第3話感想
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コメント 1

意思由宇

はじめまして。
私はアニメでこのプロジェクトを知ってハマりました。発端は電撃GSマガジンの読者参加型企画ということで「またシスタープリンセスみたいなぶっ飛んだ設定のハーレムものか・・・」という思いで見たところ、正統派なアイドル作品でびっくりしました。あのGSマガジンが、こんな正統派企画をやるなんて・・・(読者の方すいません)。
3話は序盤の締めとして完璧だったと思います。無観客というのは、ダンスや歌で失敗するよりも衝撃度が高いものですね。話の展開としては王道かもですが、演出の仕方によってとても感動できる仕上がりになるのだと思いました。
私はことりがお気に入りなので、泣きそうになる穂乃香を「穂乃果ちゃん・・・」と自分も泣きそうに泣きながら慰めようとするシーンが印象的でした。
これからも基本はテンポ良く、しかし描くところはしっかりと描いて我々視聴者を感動させてくれることを期待したいと思います。
by 意思由宇 (2013-01-27 16:26) 

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