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「ラブライブ!」演出的みどころチェック(10~12話) [アニメ]

 10~12話は、もうひとつのファーストライブ、もうひとつの「START:DASH!!」に向けたお話なんだと思っています。起承転結で言えば「承」~「転」。
 で、8話の段階でμ’sは僕らの知っているμ’sに繋がった、完成したと思ってしまいがちでしたが、そうじゃない。まだです。まだなんですよ。
 TVアニメでこういうお話を、ここまで描いてきたからには、廃校云々関係無くμ’sがμ’sとして今後も活動を続け、夢を叶えていくために、「ラブライブ!」が「みんなで叶える物語」であるために、やらなければならないこと、気付かなければならないこと、築くべきこと、描かなければならないことがまだ残っているはずです。まだ足りていない。3話の誓いの、9話の誓いの、その先に本当の意味で辿り着くために。スタートを切るために。
 何故ならば、廃校阻止でも、ラブライブ!出場でも優勝でも無い、μ’sがμ’sになるための物語―。それがTVアニメ「ラブライブ!」が綴っている物語だと思うからです。
 そのための下準備の様なパートが、10~12話だったのかなという気がしているんですけど、どうでしょうか?

■10話「先輩禁止」第10話感想
先輩禁止
 というわけで、感想記事でも先輩付けやめてみました(笑)。にっこにっこにー。

対等な関係へ
 CDのドラマパートやG'sマガジンの記事では、「先輩」なんて呼んでいません。つまり、TVアニメ「ラブライブ!」はまだ本当の意味で私たちの知っているμ’sには辿り着いていないんだよ、9人揃って「僕らのLIVE 君とのLIFE」も歌ったけど、まだやることは残ってるんだよということです。
 思い返せば穂乃果もかつて「上級生だよ」と言っていましたし、こんなことを言うと穂乃果に悪いけれど(笑)あの穂乃果ですら上下関係は意識していたわけです。
 まぁ、逆に言えばその点3年生は気が楽だよねとも思いますが、先輩と意識させないようにするのもそれはそれで気を遣うことではあります。
 学生時代の上級生下級生というのはけっこうな重みがありますよね。
 何より、対等な関係へ。対等に語り合える関係、本音を言える関係へ。先輩後輩で遠慮する、配慮するような関係が続いていては、これから描こうとしていることを描けなくなります。

部長の矢澤さん
 そういえば部長だった。…いや、何気に重要。

かよちんマジ天使


真姫ちゃんとにこの格差
 学年の格差。生活面での格差。体型の格差…。
 格差を乗り越えようとするにこの姿は痛ましくもありますが、対等になろう、かまってあげようという気遣いのようでもあります。

夕日と朝日
 Aパートの終わりは夕日で、10話の終わりは朝日です。
 Aパートの終わりは希が「真姫ちゃんも面倒な人だなーって」と言い、10話の終わりでは真姫ちゃんが「面倒くさい人ね、希」と言います。

ごはん大好き小泉花陽です
 ごはんはおかず。カレーは飲み物。

険悪な雰囲気になりかける
 とにかく練習と主張する海未。花火をやりたい凛。マイペースな穂乃果。片付けて寝る真姫。空気読もうとことり。お風呂に入ろうと花陽。どーすんのとにこ。上手くまとめきれない絵里。希が丸く収めますが、すこしギスギスとした感じになりかけました。μ’sの不完全さを物語っています。

枕投げ
 スローモーションを織り交ぜつつの流れるようなカット割りの緩急によって絶妙なスピード感を生み出しています。
 一方で海未ちゃんの超音速枕は1発目は猛スピードで飛んでいくカットが一瞬だけ挟まれますが、2発目3発目は投げる動作や飛んでいる課程を省き、突如画面に枕がフレームインしたかと思ったら次の瞬間には当たっていることでよりいっそうのスピード感のある演出になっています。

■11話「最高のライブ」第11話感想
にっこにっこにー
 「アイドルとかよくわかんないけど、みんなが笑顔になってくれるなら、それで幸せ」
 何気に重要な台詞ではないかと。

1話と同じ穂乃果の説明
 第1話と同じような穂乃果のモノローグで始まることで、1話からの対比になっていると共に、あの時を思い返し、特別な回が始まるんだという予感を感じさせます。もう一度始まる1話、2話、そして3話「ファーストライブ」へ。

海未のサインと穂乃果のサイン
 隅っこに小さく書かれた海未のサイン。強くでられない海未。一方で加減を考えない穂乃果、というのを表しています。そう、強くでられない、加減ができない…。

落ち込みまくるメンバー
 くじ引きに外れて講堂が使えなくなり動揺し落ち込むメンバー。ひとり平然としている風の真姫ちゃんですが髪の毛くるくるの癖が出ています(ニヤニヤ)。

光と影の演出
 嘘をついてる、隠し事をしているキャラクターは影に置かれています。
 エアメールを手に影に佇むことり。海未は部屋の明かりを背に逆光。体調不良を隠している穂乃花は薄暗い更衣室。
 ライブ直前の場面、最後のことりのカットは画面の周辺光量が落とされています。
 そしてシルエットで始まりシルエットで終わるライブ。

強調される「いつも」
 いつもの穂乃果。いつもそうやって。いつものように。
 しかし、そんな言葉とは裏腹に、視聴者が感じるものはいつもと違うことばかり。「いやいやいつもと違うよ、気付いて!」とヤキモキさせられます。とにかく嫌な予感をビンビン感じさせます。
 穂乃果のテンションがいつもと違う。ことりと海未の様子が違う。他の皆もいまいち変化が見えていない(見ていない)。ギャグ要素が無駄に大げさ。「大丈夫、いける」と強く念を押す穂乃果。
 この回は、視聴者に「違う」と気付いてもらわなくてはいけない回です。なので、いつもの「ラブライブ!」のようでいつもと違う居心地の悪さをちょっとずつ感じさせるために、冒頭の「前回のラブライブ!」からしておかしいし、レイアウトやカット割りのリズム、見せるモノと見せないモノ、台詞回し、劇伴などあらゆる要素が微妙に崩されていたり不安感、違和感を感じさせるようになっています。

■12話「ともだち」第12話感想
普通に前回の「続き」から始まった
 11話ラストの穂乃果が倒れた場面の続きから普通に始まりました。「ラブライブ!」のリズム感なら、保健室とか穂乃果の部屋とか、そういう場面から始まってもおかしくないのに。

努めて明るく振る舞うにこ
 おそらく、「ラブライブ!」辞退を誰よりも悔しく思っていたのはにこです。おそらくそれは穂乃果以上にだったかもしれません。ですが、にこはそれを受け入れた。そしておそらく、最終的に決めたのはにこだと思います。なぜならまがりなりにも部長としてのプライドがあるからです(それに、「ラブライブ!」辞退はみんなで話し合って決めた、と絵里は言っています)。そして、ある意味そうなる原因を作ったとも言える穂乃果を責めることもありません。故に引き立つラストのにこの怒り。

信号機
 買い物があるからと理由を付けて一人で帰ろうとすることり。このとき歩道の信号は青から青点滅に、そしてことりが渡りきる前に赤になります。また、この場面はことりの表情が見えないように背後からのショットになっています。

そんなに前から…
 ほんとうに不思議そうな顔で「そんなに前から…」と呟く穂乃果。いかに気付いていなかったかというのがわかります。

光と影
 理事長室では雨が影だけで描かれます。下校途中の公園のシーン。ことりは影になっています。また、車両止めのフェンス越しに海未との間に壁があるように、あるいはことりを閉じ込めるように描かれています。「うまく言えなくて…」と呟くことりの表情は海未には見えていても視聴者には見えません。

放課後は節電
 以前も指摘したように、音ノ木坂学院は放課後節電です。Bパートの学校存続パーティからことりの告白のシーンにかけては、放課後節電という設定による光と影がもたらす効果が巧みに用いられています。

見えないから見えてくるもの
 12話はキャラクターの表情が見えないカットが印象的です。
 海未がことりの留学について語るシーンで穂乃花の表情だけがあからさまに隠されています。だれが見ても、わざと穂乃果の表情を隠していると判るようにあえてしてある。穂乃果はどんな気持ちなんだろう、どんな顔をしているんだろうと視聴者に想像してもらいたい場面だからです。
 「海未ちゃんは知ってたんだ」と穂乃果に問われ、穂乃果が「どうして言ってくれなかったの」とことりに問うている場面で海未の顔はフレームの外に隠れていて、知っていながら隠してきた後ろめたさが現れています。また、「どうして言ってくれなかったの」という言葉は、海未の胸にも刺さるかのようです。
 そして穂乃果の問いに反論し、大粒の涙を流すことり。見上げる格好の穂乃果にキラキラと涙が降り注ぎ、穂乃果を押しのけ、涙をこぼし部室を飛び出していく一連のシーンでは、ことりの表情が見えません。しかし、そんなことりを見上げている穂乃果の「ハッ」とした表情が、そこにキラキラと輝き、降り注ぐほどの大粒の涙が、より多くのものを物語り視聴者の胸に訴えかけます。
 あえて描かなかったり、間接的に描くことでより鮮烈に見えてくるものがある。定番の手法ですが、ひじょうに効果的に用いられていたのではないでしょうか。

こぼれ落ちる涙と上下の位置関係
 最初は穂乃果がことりを見下ろす位置だったのをさりげなく見上げる格好に切り替えている演出の妙技。これは“こぼれ落ちることりの涙を受ける穂乃果”という構図を成立させるためでもあると同時に、力関係の上下反転でもあります。また、それでも強い口調で語る穂乃果は“下向きの顔のアップ”で描写され、位置的にはことりより下なのにどこか見下ろして問い詰めているような印象も与えます。
 見下ろすか見上げるかでも言葉の力や印象はけこう違ってきます。

愕然と立ち尽くす穂乃果
 悩んでいたことりの様子を語る海未ちゃんの声をバックに、薄暗い廊下を走り去ることりが描かれ、愕然とした表情で立ち尽くす穂乃果のアップに切り替わります。カメラはぴくりとも動かず、段階的に遠ざかっていき、最後はブラックアウトします。
 こころの揺らぎを僅かに揺らめくカメラという効果で表現してきた「ラブライブ!」ですが、この場面ではぴくりとも動きません。最後は劇伴と共にブラックアウトです(劇伴も3話で観客が居ない場面に直面したときの曲なんですよね)。動かず、遠ざかるカメラは、放心状態を強く印象づけます。海未の話も聞こえているのか聞こえていないのかと言った感じで、これは視聴者も海未の話が耳に入ってくるようで入ってこない気分だったのでは無いでしょうか。
 ことりの告白からのこの一連のシーン、とても辛い場面ですが、自分はシリーズ屈指の名場面としてとても気に入っています。とにかく神がかってる。

ことりの迷い・海未の言葉・穂乃果の後悔
 廊下を走り去ることりは窓から差し込む光と影を交互に行き来します。
 ・このときの海未の言葉は→「行くかどうか迷っていたようです」
 窓からの逆光で暗く影を落とすことり。
 ・このときの海未の言葉は→「行きたがってなかったようにも見えました」
 愕然とする穂乃果のアップ。
 ・このときの海未の言葉は→「ずっと穂乃果を気にしてて」
 逆光の中の穂乃果と海未のウエストショット。
 ・このときの海未の言葉は→「黙っているつもりは無かったんです」
 カメラはさらに遠く。
 ・このときの海未の言葉は→「すぐ相談するつもりだったんです」
 「判ってあげて下さい」でブラックアウト。
 続くカットはことりの部屋。
 ことりママが問います。「ちゃんと判ってくれた?」と。
 そして「ごめんね」メール。
 …絶妙すぎる…。

メールでの謝罪
 そんなごめんなさいじゃごめんなさいにならないよ、穂乃果。
 だぶん、穂乃果も判ってると思うんですけどね。
 …というか、メール、全文を送っていないようにも受け取れなくも無い(肝心の文書の後半はことりが読んでいるものではなくて穂乃果の携帯画面なんですよね…)。

考えてみれば地味だったA-RISEのダンスシーン
 これ、穂乃果、ことり、海未の3人だった頃のμ’sと重ねるためだったのかもしれません。これといった装飾のないステージで歌い踊る3人の姿は、どこかファーストライブで「START:DASH!!」を歌う穂乃果たちの姿に重なります。そして、モニタの向こうの彼女たちは満員の観客の前で歌っています。
 (凄さという点でも、パソコンのモニタの向こう側という点でも)手の届かない追いつけない存在。ことりが欠けてしまうと(3人では無くなると)、ますます足りなくなってしまう。
 ついでにもうひとつ。ランキングシステムが予想通り結局そのしくみについて詳しく語られることが無かったように、A-RISEというスクールアイドルにも、少なくともこのシリーズにおいてはたぶんこれ以上の意味は無いと思うんですよね。このためだけにいた、といっても過言では無いかもしれません。

辛そうな穂乃果
 シリーズを振り返ってみると穂乃果は結構辛そうな表情を見せてきている気がする。

穂乃果は本気でそう思っているのか?
 「アンタそれ本気で言ってる!?」というにこの言葉に、穂乃果は答えません。

9人で最後のライブという言葉
 穂乃果が応えを求められたとき、「9人の最後のライブ」というフレーズが脳裏をよぎっています。穂乃果は、「9人」での「最後」のライブを実現させたくなかった。「9人」のμ’sを終わりにしたくなかった。ことりを送り出すようなライブをしたくなかった。ならば、自分が抜けて9人で無くしてしまえば、「9人」で「最後のライブ」はできなくなる。よくよく考えるとヘンな理屈ですが、たぶんそんな思考状態ではないでしょうか。

原動力の喪失あるいは失速
 全力で空回りしてぶっ倒れた後だかこそ余計に、知らない間に目指す場所も無くなってて、当初の目的もひとまず達成されちゃって、フッと何かが抜けちゃう。失速。そしてことりちゃんが居なくなるという喪失感。
 穂乃果にとっての原動力の喪失。μ’sにとっての原動力だった「穂乃果」の喪失。永久機関だと思い込んでいたものが止まる、みたいな。
 穂乃果だけで無く、μ’s全員に問われているものがそこにある。

失速(しっそく)あるいはストール(Stall)とは、翼の場合、上面に引き寄せられて沿って流れていた気流が、迎角を大きくしていったときに離れてしまい、揚力が急減したりする現象、あるいはそうなった後の状態である。
失速の過程
翼の失速特性やレイノルズ数にもよるが、概ね次のような過程を経る。
1.迎角を大きくしていくと、流速や迎角の大きな一部の領域で小規模な境界層剥離が発生する
2.剥離と再付着が交互に起こる、バフェットと呼ばれる現象が起こる
3.これによって翼が振動するため、パイロットは失速しつつあることを知ることができる。
 迎角がさらに大きくなると剥離領域が拡大し、失速する
4.失速から回復するには、翼の迎角を失速角よりかなり小さくしなければならない。
 迎角をさらに大きくしていくと揚力係数は再び増加する
(Wikipediaより)


海未だけが手をあげた
 だれもがショックと悲しみと(そしてある意味怒り)で呆然とする中、ただひとり駆け寄って、そして手をあげたのは海未でした。海未だけでした。
 小さい頃から穂乃果にひっぱられ、ついていき、振り回され、でも、「数え切れないほどに」穂乃果に憧れ、1度たりとも「後悔したことはなかった」。そんな穂乃果が、自分の「やりたいこと」をやるだけやって放って逃げるなんて許せないし悔しいし、言葉の裏にあるのは「あなたはそんな人ではなかったはずです」「わたしを後悔させないでください」という想いであり願いであり叱咤なのかもしれません。
 この場面も「表情」が描かれません。穂乃果がどんな顔をしているかは見えません。次回でどんな顔をしているのか楽しみです。ウヒヒ…(ゲス顔w)。

きっと青春が聞こえる
 自分がいい年したおっさんだからなのか、12話の穂乃果たちを見ていると「あぁ、青春してんな~」と微笑ましい気持ちにすらなってしまいます。高校生とはいえ、多感な年頃。まだまだ人生経験も少ないが故の未熟さ。どうしたらいいのか(どうすれば良かったのか)判らなくなったり、意固地になったり、すれちがったりぶつかったり。なんだかんだでまだ子供な部分も多いんだなぁというのが感じられて実に愛おしい。…というか、誰しも少なからず経験することでしょうし、年取った自分も未だにそうだったりするんだから、難しいよね、辛いよね、でもたくさん後悔して、たくさん頑張れと応援したくなります。
 そして、青春だなーと思っているところへエンディング「きっと青春が聞こえる」ですよ。何気に1話を除いてエンディング曲が一貫しているというのも素晴らしい(OPとEDはある意味その作品の「顔」だから、よほど意味が無い限りコロコロ変えたり特殊な形にしすぎないほうがいいと個人的には思います)。シリーズ全体に一本芯が通っている感じですし、それでいて、各回ごとに主題に合わせて歌っているキャラクターの組み合わせが違っていて、そのエピソードにマッチしたものにもなっている。同じ曲なのに毎回違う曲をエンディングに充てているような面白い工夫で実に巧いなと思います。
 

きっと青春が聞こえる

きっと青春が聞こえる

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ランティス
  • 発売日: 2013/02/06
  • メディア: CD



 ■追記:12話は「レイニー止め」!

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