0.「ラブライブ!」は、バーチャルアイドル アイドルを扱ったアニメやゲームはこれまでにも色々ありましたが、「ラブライブ!」がそれら従来のアイドルアニメ・ゲームコンテンツと根本的に違う点は、そもそも作品中に登場するアイドルとか、アイドルを題材にしたアニメやゲームが原作でそこから派生したアイドルユニット企画…
“では無い”ということです。
9人の架空のアイドルグループがデビューします、というところから始まっている。アニメやゲームの中の登場人物がCDを出しているのでは無く、μ’sというアイドルがCDを出しているんです。
1.「ラブライブ!」は、雑誌の読者参加企画 「ラブライブ!」という作品は、電撃G's magazineという雑誌で古くから続いている読者参加ページの企画で、2010年の8月号から始まりました(小説や漫画、ゲームなどが原作・発端として存在していたわけではありません)。原案はG's magazineのこの企画ではお馴染み、ゴッドこと公野櫻子先生。アスキーメディアワークスが雑誌で展開し、ランティスが楽曲を手がけ、サンライズが映像を制作するという三社合同プロジェクトという体裁を取っています。
廃校の危機に瀕した学校をアイドル活動で救うというバックストーリーと登場人物紹介に始まり、アイドル活動を題材とした企画だけあって、ほどなく1stシングルをリリース(…するも、売り上げ枚数は3桁、記録によると推定434枚だったとかなんとか…)。当初はキャストも非公開の状態で、公開されても当時のアニメファンにとっては馴染みのない名前ばかりという、いろんな意味で謎の企画でした。
また、読者参加企画だけあって、グループの名称やユニットの組み合わせ、PVでのセンターポジション、イメージガールなどは公募や投票によって決められています。
2.メインのシングルCDにアニメーションPVが付くのが特徴 「ラブライブ!」はアイドルユニットを扱った企画というだけあって実際に歌も出しているのですが、大きな特徴のひとつとしてメインとなるシングルにアニメーションによるミュージッククリップビデオが制作されているということが挙げられます。
これが非常に完成度が高く、特に2ndシングル「Snow halation」では楽曲・映像共に格段に進化しており、多くの新規ファンを獲得するきっかけにもなったと思われます。
古くからキャラソンのミュージックビデオというものは存在しましたが、企画モノCDのミュージッククリップビデオを、実在のアーティストのPVよろしくアニメーションでここまで本格的につくった作品というのはなかなか他に類を見ない試みです。
また、PVの中で随所に挿入される日常風景の描写に想像を膨らますと共に、この物語をアニメで見てみたいという思いを募らせたファンも多かったことでしょう。
2Dと3Dを組み合わせた映像は「ラブライブ!」の大きな特徴。3.2次元に存在し、3次元で活動する2.5次元アイドル 「ラブライブ!」は雑誌の企画であり2次元の存在ではあるけれど、読者参加というプロセスでファンと共につくり、実際のアーティストのようにCDをリリースし、課外活動という名目でイベントが開かれてきました。
そんな「ラブライブ!」の大きなターニングポイントのひとつが、2012年2月19日に横浜BLITZで開催された初のライブイベント、「μ’s First LoveLive!」です(アニメ化の発表もこのとき)。
これまでにもアニメ作品等の作品内ユニット・キャラクターがリアルの世界でライブを開催するといったコンセプトのライブは多く存在してきましたが、「ラブライブ!」の場合はもう一歩踏み込んで2次元の世界を3次元に再現することに挑み、「ラブライブ!」の特徴として積み上げてきたシングルCD付属のアニメーションPVをステージ上に再現してみせたのです。その圧倒的なパフォーマンスと歌唱は、続く「ブシロードカードゲームLIVE」や「アニメロサマーライブ」「DENGEKI MUSIC LIVE」などでも多大なインパクトを与え、注目度と期待を増していったのではないでしょうか。
2次元のキャラクターのユニットがμ’sなら、演じるキャスト陣のユニットもμ’s。両者がイコールの存在というのも「ラブライブ!」の特徴です。
■補足追記:ちなみに、ライブでのPV完全再現は企画発足当初(キャスティング時)から想定されていたものではなく(ライブ自体も当初は計画になかったらしい)、PVの振り付けも実際にキャストが歌って踊ることは考慮されていなかったそうです。「リスアニVol.14.1」で詳しく語られていますが、キャストに資料を渡して踊りをやってみてもらったところいけそうだという手応えがあったことから、本格的なダンス再現への挑戦が始まったのだそう。 声優、歌手、タレント、モデル。様々な分野から集まった顔ぶれも他とはひと味違う魅力かもしれませんね。4.ストーリー成分は断片的なモノしかなかった 読者参加コーナーとして始まった「ラブライブ!」は、先に述べたように物語部分を明確に描いた原作と呼べるモノが存在していませんでした。雑誌に掲載されるピンナップイラストやコメント、シングルCDに収録されている自己紹介やミニドラマといった要素だけが、キャラクターやドラマ性を知る数少ない手がかりだったのです。「廃校の危機を救うためにアイドル活動」という設定はあるけれど、知ることができるのは主に“活動の様子”がほとんどで、細かな部分は謎でした(μ’sという架空のアーティストが存在していて、芸能記事やファンクラブの会報よろしく彼女たちの日常や活動が雑誌に掲載されているような感覚ともいえます)。
2011年の5月からは、ニコニコ生放送とWebラジオで番組が始まり、番組コーナーを通じて少しずつではありますがキャラクターの一面(…というか、ゴッドの本気w)も垣間見えるように。
そして、2011年12月から遂に、待望のコミック版が電撃G's magazineで連載開始となりました。現時点ではこれが唯一「ラブライブ!」の“物語”部分を描いた作品です。1月放送開始のアニメ版もPVを見る限りではおおむねコミック版と似た感じですが、どうやら細かい部分で違いがあるようで独自の展開になりそうです。そもそもコミックの方もまだまだ序盤ですし確実にアニメ版に追い抜かれますから、ファンにとってもほとんどオリジナル作品を見るのに近い。どんなお話になるんだろうというドキドキ感がありますね。
あと、個人的に「ラブライブ!」の大きな魅力を挙げるとするならプロジェクト全体の面白さでしょうか。いまでこそ楽曲やキャラクター、キャスト陣の魅力も大いにありますが、正直最初は「なんだコレ?正気か」と言われるような企画だったと思うんです(1stシングルの自己紹介なんて“事故紹介”と揶揄されるくらいですしね)。見向きもされず、CDの売り上げもずっと低空飛行だった。だけど、それでも度肝を抜くようなPVを作り続け、地道に、地味に、粘り強く続いて、魅力を積み重ねて、2次元を3次元に再現までしてみせた。一体何なの?どうなるんだろう?どこへ向かうの?そこまでやるの!というのが、ある意味ワクワクさせられるし、見届けてみたいなと思わされるんですよね。もちろん、中心にあるバーチャルアイドルとしての面白さも外せない。
というわけで、アニメ版楽しみです。
ラブライブ!Official Web Site 「ラブライブ!」の入門書として「First Fan Book」は良くできていると思うのですが、残念ながら限定販売で既に入手困難なんですよね…。 ■追記:「First Fan Book」
電撃屋で取り扱い開始みたいです。
企画の柱でもある音楽CDも多数リリースされています。2013年1月にはベスト盤がリリース予定なので、全部揃えるのは大変…という方はぜひ。
物語の舞台は「秋葉原と神田と神保町という3つの街のはざま」。…考えてみれば、秋葉原という街をオタク的視点以外から舞台にした数少ない作品ではないでしょうか。
より大きな地図で ラブライブ!舞台探訪マップ を表示【特別企画】『ラブライブ!』集中連載(OH! Live)(閉鎖)
■追記:2010年7月号~2013年2月号までの電撃G's magazine の「ラブライブ」コーナーの記事をまとめた本が出版になりました。入門書としても持ってこいですし、当時の記事を読んでみたい、という方はぜひ!
ラブライブ! HISTORY OF LoveLive! (Amazon)