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「ラブライブ!サンシャイン!!」第13話感想・その1 [アニメ]

 #13「サンシャイン!!」
#13「サンシャイン!!」
 冒頭、浜辺に佇む千歌が振り向くとライブ会場に…というカット割り。そして「今日はみなさんに伝えたいことがあります」というメッセージ。空間の超越、時間の倒置、これまでとは毛色の異なる始まり方に今回が特殊な立ち位置の話数であることを伺わせます。
 振り返ってみれば、この1分にも満たないアバンタイトルのシーンが今回の13話を、そしてある意味シリーズ全体を象徴しているというか、メタファーのメタファーみたいな構造になっているという風にもみてとれる気もしなくもない。
 そんな感じで始まる13話。

 さて、話は遡って、地区予選に向けて練習に励むAqoursメンバー。真夏の屋上はさぞかし暑かろう…。それでも黒いコートを羽織る善子。「黒は堕天使のアイデンティティ、黒が無くては生きていけない…」「死にそうですが…」の流れは絶妙でした。
 「よーし、そろそろ再開しよっか」と張り切る千歌でしたが、「休むのもトレーニングのうちですわよ」というわけで休憩タイム。アイスの買い出し担当を決めるじゃんけんでヨハネチョキで負ける善子っていう図は、キャスト陣でも同様のお約束。このリンクしている感じも面白い。
 あと、コンビニでアイスを買ってる善子を興味津々で見ている女の子たち、またあの人来てるよ!…みたいな感じでしょうか(笑)

 「ずら~」「ピギ~」「ヨハ~
 アイスを食べながら図書室で休憩。冷房が欲しいとこぼしますが、統合の話が出ているような学校にそうそう付くわけも無く…。「…そうだ、学校説明会の参加者って今どうなってるの?」と確認してみるも、相変わらずのゼロ。
 「はぁ~。そんなにこの学校魅力無いかなぁ。少しくらい来てくれてもいいのに」
 と、そこへ図書室日本を返しに来たというよしみ、いつき、むつの3人がやって来ます。彼女たちは、この暑い夏休み中にもかかわらず毎日練習していたという千歌たちにすこし驚きつつも、その姿に輝きを見出します。
 「練習…毎日やってたんだ…」
 「千歌達って、学校存続させるためにやってるんだよね」
 「うん…」
 「でもすごくキラキラしてて!」
 「まぶしいね!」
 「うん!」

 ここの流れは彼女たちのほんとうにワクワクしてきてる感じが伝わってきて良かったし、そしてすごく大事なシーンでもあるんですよね。ポイントは大きく3つ。
 ひとつは、千歌達の活動のことが、実は意外と広まってはいなかったこと。クラスメイトの仲良しのむつたちでさえ、毎日のように練習していたとは思ってもいなかった(そんなに頑張っていて、でもこんなに楽しそう、という気付き)。そして学校説明会の参加者ゼロというのも、魅力が有る無い以前にそもそもちゃんと伝わりきっていなかった可能性があることがわかる。
 もうひとつは、輝き。
 「輝きたい!」と、輝きに憧れ、願っていた千歌が、実はいつの間にか“輝いている側”になりつつある。「すごくキラキラしてて」「まぶしい」存在になっていた。そしてむつみたちが、その輝く姿に心を動かされたということ。
 そして、この13話が千歌たちの視点と言うよりも、どちらかというと“みんな”の…“私たち”の視点で描かれているということです。
 Aqoursの物語は12話まででひとつの区切りが付いていて、13話は言ってしまえばある種のエピローグであり、そして今度は“私たち”にとっての「輝きたい!」が描かれている回でもあるのかなと。

■私たちも!
#13「サンシャイン!!」
 そんなこんなで、夕暮れ時まで続いた地区予選へ向けた練習。
 夕暮れのプールサイドでの、千歌のアップからトラックバックしつつ逆光で空を仰ぐカットは実に印象的で見事な映像でしたね。
 そして見上げた空には鮮やかな飛行機雲。一瞬の静寂。
 シリーズを振り返ってみると、Aqoursにとっての大切な出会いや出来事は、たいてい夕方に起きて、夜に気づきを迎えてたなぁ、なんてことを思い出す。
 とそこへ、「あ、いたいた!千歌ー!」とむっちゃんたちがやって来ます。
 昼間の千歌達の姿を見てから気になっていたという彼女たち。「そんなにスクールアイドルって面白いのかなって」「私たちも、一緒にスクールアイドルになれたりするのかな?…学校を救うために」と興味を持ったこと、そして「実は、他にももっと自分たちにも何か出来るんじゃ無いかって考えてる子」が結構居るらしいことが明かされます。
 統廃合の話も、最初は仕方ないと思っていたけど、やはりみんなこの学校が大好き。だから―
 「学校を救ったり、キラキラしたり輝きたいのは、千歌だけじゃない。私たちも一緒に何か出来ること有るんじゃ無いかって」

 そんなむつの提案に、「やろう!みんな一緒に」と応える千歌。
 「やったー!なんかワクワクしてくるね」と喜ぶむっちゃんたち。その様子を少し心配げに見つめる梨子ちゃん。

 前作「ラブライブ!」で主人公の親しいクラスメイトとして登場したヒデコ、フミコ、ミカの3人は、μ’sの良き理解者であり強力にバックアップする存在でした。そしてサンシャイン!! が割りと意図的に前作に似せた構図を取り入れていたこともあって、ついつい、よしみ、いつき、むつの3人もそういう立ち位置だろうと(3話の展開もあって)みんな勝手に思い込んでいたと思うんですよね。でも、サンシャイン!! に登場するこの3人はむしろ、よりシンプルに「私たち」自身の姿だった。
 むっちゃんたちは3話で千歌たちのファーストライブを手伝ったりしてくれているけれど、それは部活の助っ人を買って出るようなノリ。今回のは「面白そう」だから「やってみたい」なんですよね(ちなみにμ’sのストーリーでは、学校の生徒は協力してくれたけど、「面白そう、自分もやりたい」と言ってくる生徒は描かれなかった)
 そういう意味でも、この13話は現実の「私たち」の「気付き」がひとつのテーマとして描かれたエピソードとも言えるのではないでしょうか。

 「楽しみだな、ラブライブ!」と嬉しそうに語るその言葉は、まるで自分の気持ちであるかのような喜びを感じさせます。

#13「サンシャイン!!」
 さて、その夜。千歌ちゃんと梨子ちゃんのベランダトーク。
 むっちゃんたちからの要望に、「ダンスは無理だけど、一緒にステージで歌うとかなら間に合うんじゃ無いかなって」と提案する千歌ちゃん。
 「みんなが歌って、うまくいって、それで有名になって、沢山入学希望者が来れば、学校も存続できるし…」とノリノリの千歌に対して、「でもね…」と何か言いたげな梨子ちゃん。
 千歌は続けます。
 「それと、今はゼロをイチにしたい。今日、むっちゃんたちと話してて思ったの。なんで入学希望者がゼロなんだろうって。だって、ここにいる人はみんなここが大好きなんだよ。町も学校も人も、大好きなんだよ。それって、ここが素敵な場所って事でしょ。なのにゼロって事は、それが伝わってないって事だよね。…ラブライブ!がどうでもいいってわけじゃないけど、ここが素敵な場所だってきちんと伝えたい。そして、ゼロをイチにしたい!
 千歌の気持ちにもう迷いやブレは無いし、振り返ってみればこの言葉でクライマックスの場面でのキモチも予めぜんぶ語られてるんですよね。

 …ふと気がつくと、いつの間にか千歌の背後に一人の女性の姿が。梨子ちゃんはお化けと驚きますがなんと…
 「わっ、お母さん!」
 ええええ!!??まさかのロリバばwせdrftgyふじこlp
 千歌曰く東京に居たはずだそうですが、なんでも「千歌がスクールアイドルとかいうのやってるから、一度見に来てって」志満姉ちゃんから連絡があったそうで。
 「また余計なことを…。とにかく今梨子ちゃんと大事な話してるんだから、あっち行ってて」と追いやる千歌ちゃん。
 「はいはい、わかったわかった」と立ち去る千歌ママ、「いっこだけいい?」と千歌に尋ねます。
 「今度は?やめない?」
 答えは勿論―
 「うん、やめないよ


■輝きたい!
#13「サンシャイン!!」
 いよいよやってきました地区予選。“来たるべき聖戦の地”は名古屋。あー、そういえばそうですよね、東海地区ですもんね。
 さて、一緒にやろう!と言っていたむっちゃんたちとの待ち合わせ。
 「ごめんごめん、ちょっと道に迷っちゃって」と少し遅れて登場の3人。
 「他の子は?」と尋ねる曜ちゃん。
 「うん、それなんだけど…実は…」と困ったような表情に、まぁ夏休みだし仕方ないよねと思ったところでなんと、「私たち何度も言ったんだよ」「でも、どうしても…」「全員で参加するって!」…というわけで、浦女生徒大集合。
 千歌も「これで全員でステージで歌ったら、絶対キラキラする!学校の魅力も伝わるよ!」と大喜びでしたがここで…。
 「ごめんなさい!」
 梨子ちゃんから重大発表です。
 「実は…歌えるのは事前にエントリーしたメンバーに限るって決まりがあるの」
 「そんなぁ」
 「それに、ステージに近づいたりするのもダメみたいで…。もっと早く言えば良かったんだけど」
 残念。みんなで一緒にステージで歌うのは無理そうです。
 「ごめんね、むっちゃん…」
 「いいのいいの、いきなり言い出した私たちも悪いんだし」
 「じゃ、私たちは客席から宇宙一の応援してみせるから」
 「浦女魂、見せてあげるよ!」
 「だから、宇宙一の歌、聴かせてね!」
 その言葉に、決意も新たにする千歌たち。

 ラブライブ!と言う作品は、語る必要の無いこと、描く必要の無いことは基本的にバッサリ削るか、適当に流されます。そして、“ラブライブ!という大会”も、“廃校阻止”という要素も、本作の枝葉に過ぎないというのは、第1作目から延々と一貫していることです。「廃校」なんてぶっちゃけオモシロトンデモ設定に過ぎません(笑)
 そんな作品において、“珍しく”“わざわざ”“説明台詞で”“直前になって”“今更”大会の決まり事が語られる。もっと早く言ってよというツッコミもごもっともですが、まぁ明らかに前フリですよね(笑)
 ステージに立てないという規定を持ち出したのは、逆説的だけど、“ステージ”に“立たせる”ためであり、ステージに立つ(あるいはそれに類する)展開があるよという布石です。「大会の規定」自体には大した意味は無い。
 予め申請してエントリーしとけばいいってのも、まぁそりゃそうだけど、たいして盛り上がらないというか、フツーだし、なによりそれでは意味が無い。

 ちなみになぜ説明する役回りが梨子ちゃんなのかは、千歌との対話シーンを作れる存在であることと、手っ取り早く盛り込める、余計な段取りを省き展開を単純化できるから、といったところではないでしょうか。あとはダブルヒロインとしての意味というか、メタ的な立ち位置というか、音ノ木坂からの転校生=音ノ木坂のことを知っている私たち視聴者=“ヤボなツッコミを入れる人”的なところかなと(そして案の定ヤボなツッコミを入れたことでしょう)。3話なんかはわかりやすい例ですが、そのあたりの“なんだかんだ言われてる・言われる”…というのを自覚的に物語に組み込んでる感じは、サンシャイン!! のアニメの特徴のひとつかなとも思います。なぜなら、これは「私たちの」物語だから。


 そんなこんなの直前でのドタバタもありましたが、いよいよ本番。
 控え室では1年生組がメイク中。
 まるで夢のようだと驚きと不安を語るルビィと花丸に、「今こそがリアル!リアルこそが正義…!」と鼓舞してみせ、そして「ありがとね…」と抱きつく善子。
 ガラにもなく善い子の善子な所を見せてしまった照れ隠しもあってか、「さ、あとはスクールアイドルとなって、ステージで堕天するだけ!」「いくわよ!堕天使ヨハネとリトルデーモン!ラブライブ!にーっ降臨!」といつものノリで陽気に振る舞う善子。こういうところが彼女の魅力であり優しさであり強さです。考えてもみれば、善子は幼い頃から既に“羽根を手にしていた”とも言えるんですよね(黒いけどw)。

 そして善子に感謝の言葉を告げられたときの花丸の「黄昏の理解者ずら」という言葉。これは4話や5話に繋がっている。
 4話で花丸がルビィのキモチを後押ししたときも夕暮れ。5話で善子に対して理解の言葉を花丸が述べたときも夕暮れ。そしてそこで語られた幼稚園の頃の想い出。そこもまた、夕暮れ(黄昏)のシーンでした。「私は天使なの!」と高らかに宣言する善子に羨望の眼差しを向ける花丸。彼女はまさに、黄昏の理解者なのです。

 そうそう、メイクをするシーンが描かれるというのもこの作品では珍しい。そこには「あとはスクールアイドルとなって」ステージに立つ自分に「変身」する、ということの象徴的な意味合いでもあり、(こんなふうに変身するなんて)「信じられない」「夢みたい」とボンヤリ語る花丸とルビィの心情を引き立てている。そして更に、ある意味“変身”に関しては大先輩であるところの善子の言葉の説得力になっている。
 「今こそがリアル!」という言葉には、この13話が“ある種のリアル”なんだぞ、というメタ的な意味合いも込められている気がするんですよね。
 ラブライブ!サンシャイン!! というアニメが、“(現実における)私たち”の“今”の物語でもあるという視点から考えると、今この瞬間描かれているのは、リアル、すなわち私たち自身の世界の事である。13話で今描かれているのはリアル。空想の物語の中のAqoursのお話ではなく、もっと包括的な、現実(=リアル)のAqoursと私たちの物語である…と。

 一方、所変わって会場を見つめる3年生。
 「高校3年になってから、こんなことになるなんてね
 「まったくですわ。誰かさんがしつこいおかげですわね
 「だね。感謝してる。鞠莉
 「感謝するのは私だよ。果南とダイヤがいたからスクールアイドルになって、ずっと二人が待っててくれたから、諦めずに来られたの
 3人が3人とも、互いを強く強く想うが故にすれ違う時間を過ごしてしまった3年生組。その想いはもちろん…
 「あの時置いてきたモノを、もう一度取り戻そう」
 学校のことを伝えたくて、廃校から救いたくて、大好きな親友と、大好きなスクールアイドルで、精一杯輝こうとして、叶えたかった、あの時、置いてきたモノ。
 それを、取り戻すんだ、という強い願い。

 そして2年生組。
 「不思議だなぁ。内浦に越してきたときは、こんな未来が来るなんて思ってもみなかった
 「千歌ちゃんが居たからだね
 「それだけじゃないよ。ラブライブ!があったから、μ’sが居たから、スクールアイドルが居たから。曜ちゃんと梨子ちゃんが居たから。これからもいろんな事があると思う。嬉しいことばかりじゃ無くて、辛くて、大変なことだっていっぱいあると思う。でも私、それを楽しみたい!ぜんぶを楽しんで、みんなと進んでいきたい!それがきっと、輝くって事だと思う!
 「そうね」「9人も居るし」
 ドアにそっと手を置いて「9人だけじゃない…。いくよ!」

 TVアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」が、(虚実含めた)私たちの今の物語である、ということが、この一連の場面には凝縮されていますね。
 千歌の言葉は、キャラクターとしての物語の中の台詞であると同時に、キャスト陣やプロジェクトに携わる多くの関係者の、そして「私たち」の「リアル」な気持ちでもある。
 だから、「9人だけじゃない」という言葉には、言うまでもなくむつたちクラスメイトや家族や内浦の人たちだけでなく、「私たち」みんなのことを差している。そして、だからこその「10」なのです。


 長くなったのでその2へ続く。




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