幸腹グラフィティ #01 感想

ひとしなめ『ほかほか、じゅわっ～鍋・きつねうどん・おいなりさん～』

　原作未読。事前情報も全く仕入れない状態で、どうやら飯テロアニメらしいと漏れ伝わってくる楽しげな情報と、番組タイトルだけで密かに楽しみにしていたアニメ。

　冒頭、アバンタイトルでいきなりやたら色っぽい食事シーンで「おおっ」となり、スパーンと突入したオープニングの心地よさと素敵な歌と素晴らしいアニメーション映像（なんと梅津泰臣さんがディレクター！）にグッと心ひかれ、トドメの提供クレジットのうたで「視聴継続決定！」の判定を下す（笑）。これは絶対楽しくて嬉しくて幸せなアニメに違いない！と。

　そしてその直感と期待通り、いや、それ以上に楽しくて嬉しくて幸せいっぱいのアニメでした。

　冒頭、美味しそうな鰤大根をつくるリョウさん。丁寧に丁寧に、手をかけただけ気持ちをかけただけ料理は美味しくなる…という定番の展開…かと思いきや、「美味しくなってくれないですぅ～」と嘆く。おや？見た目は美味しくつくれるけど味は…的なお話かな？
　料理ができるといいお嫁さんになれるというおばあちゃんの言葉を思い出し、料理ができないということは、いいお嫁さんの逆で悪いお嫁さんになる、そしてそこから悪い嫁になるくらいなら独り身を覚悟する…という発想が可笑しくも可愛らしい。

　そんな彼女の元に訪ねてくることになった同い年のはとこのきりんちゃんと一緒に食事をしていくことで、みんなで食べるごはんのおいしさや喜びを改めて実感していく。実は料理が下手になったわけでも何でも無かった。独りで寂しくごはんを食べるリョウに、私といっしょにおいしくごはんを食べようと言うきりん、というドラマがとても温かく、素敵で、そんな物語をそっと彩る音楽がとても美しくて、優しい気持ちにさせてくれる。
　
　料理の絵そのもので飯テロ、美味しそうというより（いや、もちろん凄く美味しそうな料理描写なのだけれど）、ごはんを美味しく食べる一連のシーンを眺めるのがとても幸せに感じられる、そんな感じのドラマがとてもいい。
　特に、いなり寿司のくだりは、ただ美味しそうに描いてあるだけでなく、きりんが「食べ過ぎは胃に良くない」と食べさせてもらえなかったり、リョウの気遣い（＆先読み）に食べるのをぐっと我慢したりして、最後にお土産にと渡された包みの中に入っていて「わぁ」と嬉しそうに食べる、という一連のドラマも加わって、よりいっそう美味しそうで、そして食べたくなる。

　「また来週」と言って別れ、「また来週」と嬉しそうに呟く。「また来週」っていうのがこんなにも嬉しいアニメはなかなか無い。週末毎に通ってご飯を食べて、という感じになるのかな？だとしたら現実の時間ともリンクしていて（作中の「また来週」と現実の「また来週」が重なっていて）楽しい。
　毎週楽しみにして、一週間後にまた見られる（食べられる）のを楽しみにして、毎週楽しみに見ることに価値が感じられるテレビアニメ。

　幸腹グラフィティ（公式Webサイト）


　映像面ではアニメーション制作シャフトで総監督が新房さんという布陣だけあって、なるほど「らしい」。特に食べ物や食事の描写ではお馴染みの抽象化やコラージュの手法がいつもとはある意味逆のベクトルで発揮されているというか、いわゆるジブリ的な料理の描き方だけが美味しい料理の描き方ではないというのを実感させてくれるし、「メシデザイン」「メシ作監」という役職を設けている辺りにも力の入れようと、そして何より作り手のユーモアとセンスを感じられて楽しい。
　あと、ふんわり上品なキャラクターの主人公、リョウさんの声は佐藤利奈さん。そしてそんなリョウさんのつくった料理を美味しそうに食べるきりん役に大亀あすかさんというのも、いろんな意味で絶妙なキャスティングだなぁ（笑）。

　それとなんといっても歌が素晴らしい。

　心地の良いサウンドにメロディ、そして坂本真綾の素晴らしい歌声。イントロを聴いて一発で気に入ったし、Bメロからサビにかけてがたまらない。

　アニメーションディレクター梅津泰臣さんによる映像も素晴らしかった。

　オープニングだけでなく、エンディングもとても可愛らしい歌だったし、「次回予告のテーマ」「提供のテーマ」も素敵（笑）。劇伴もとても良かったし、CDが出たらぜひ購入したい。

　リョウときりん（佐藤利奈と大亀あすか）（FlyingDog）
　エンディング主題歌いいなぁと思ったら作曲北川勝利（ROUND TABLE）さんじゃないですか！

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